「父大活躍」竹とんぼ作りの思い出

みのさん
大阪府 1987女性

小学生の低学年時、私は、小学校の理科の時間に竹とんぼを作った事があります。

子供でも作れる簡単なキットで、分厚い竹に串を刺しただけの簡単な物。あくまで、「空気抵抗を上手く活用すれば、宙に浮くことが出来る」を体験させる為の物であり、然程高性能では無かったでしょう。

それでも私は、自分の手で作った物が宙に浮かぶ経験が楽しくて、持って帰って自慢げに両親に見せました。

ところが、そこで、父の悪い癖に火が付いた。

手先が器用で、木材加工を趣味としている父は、「そんな分厚い竹では、飛べる高さも時間もたかが知れている。自分が作り直す」と言って、竹とんぼを取り上げてしまいました。

当時の私は、自分がせっかく作った物に手を加えられてしまう事が嫌で、大激怒。だが、そんな私を納得させ、黙らせるだけのスキルを父は持っていました。

自信ありげに笑う父は、私の目の前で、「ここをもうちょっと削ったら、重さが減るから、もっと飛びやすくなる。ここを、こういう形にすれば、より空気抵抗を上手く活用できる」と一つ一つレクチャ-しながら、器用に竹とんぼを削っていきました。

「父さんも子供の頃、こうやって作った。戦後の物が少ない時代で、自分で近所の山で竹を取ってきて、小刀で削った。そうやって近所の友達たちと、より上手に作れるように競った」と、子供時代の思い出を楽しそうに語っていました。

大人になった今となっては、子供の玩具を取っていった父の行動は決して褒められた事では無いと思います。けれど、当時の私は、父の技術と、思い出話に、ただただ感心していました。

そして改良された竹とんぼは、軽く力を入れて回すだけで、まるで羽でも生えたかのように、フワリと宙へ舞い上がりました。

それが魔法のようで、美しくて。

側で見ていた兄の興味を引いたようで、「俺もやりたい」とやって来ました。

兄は「より高く飛ばしたい」と意気込んで、思い切り竹とんぼを回したのだが。結果、勢いが付き過ぎた竹とんぼは天井に激突し、薄く改良されていた羽はあっさりと折れてしまいました。

まだ遊んでいなかった私は大泣きし、その中で、「より高度で改良された技術という物は、脆くも儚い物なのだな」と無常を学びました。

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